本器は当社が国内で開発した測定器で、以下の用途で用いられます。(NaI(Tl)検出器のみ米国製)
- 食品・水・土壌・素材などの放射能濃度測定器として
特長
「食品中の放射性セシウムスクリーニング法」に適合
本器は当社が国内で開発した最新型で、厚生労働省が2012年4月1日から施行した上記法令に適合する測定器として国内へ460台納入しています。(2014年11月4日現在)
主な納入先は政府、自治体(県・市町村)、農林水産団体、生協、民間企業、研究機関、大学、専門学校です。
※NaI(Tl)検出器のみ米国製
※日本アイソトープ協会様ホームページ「食品中の放射性セシウムスクリーニング法に対応可能な検査機器」に掲載されています。→こちら
マリネリ容器が使え、測定下限値(検出限界値)が低い
1Lマリネリ容器に水を1L充填し、1時間測定した時のCs-137放射能濃度測定下限値は約1.2Bq/kg、30分間で約1.6Bq/kg、15分間で約2.3Bq/kgです。
1Lマリネリ容器に500mL充填した場合は1時間で約1.8Bq/kg、30分間で約2.5Bq/kg、15分間で約3.6Bq/kgです。
(国内での平均的な空間線量率0.08μSv/hの室内で16時間バックグラウンド測定を行った場合。空間線量率が高い場所や試料にK-40が含まれる場合はこの数値より大きくなります。)
この性能を実現するため50-1L型では以下を実施しました。
- 光電子増倍管にK-40の含有率が低い「ローバックグラウンドタイプ」を採用。
- 直径3インチ×高さ3インチの大型NaI(Tl)シンチレーション検出器を採用。
- 検出効率が良く安価な1Lマリネリ容器と、ビニル袋が使いやすく安価な500mLマリネリ容器を開発。
- 厚さ50mmの鉛の内側に厚さ3~10mmの真鍮板を配置した角型高性能ガンマ線遮蔽装置を開発。
高性能ガンマ線遮蔽装置
左:アクリル製 右:ステンレス製
角型遮蔽体は厚さ50mmの鉛板で出来ています。
内側には厚さ3~10mmの真鍮板を配置し、バックグラウンドの低減を図っています。
2013年6月に外装がステンレスの「ステンレス縦型」から丈夫な白色アクリル板の「50-1L型」へ変更されました。
いずれも検出器は縦に配置され、上部にはスライド式遮蔽体が設けられキャスター付です。
「50-1L型」は幅41×奥行51cm×高さ65cmで質量が約220kgと少し軽量化されました。
自動温度補償機能を装備
分解能0.1℃の温度センサーをNaI(Tl)結晶の近傍に設け、その温度を基準にアンプゲインを自動制御する方式でガンマ線測定エネルギーの変動を0℃~40℃の範囲で±0.5%以内に収めました。
この機能を実現するため検出器を恒温槽に入れて温度特性を取得し、さらに1年ごとの校正時にも再取得し経年変化に対応しています。
使える容器や充填量の種類が豊富(最大10種類)
左から1Lマリネリ容器・500mLマリネリ容器・900mLポリ容器でこれらは本体がポリプロピレン製、蓋がポリエチレン製で密閉式です。右端は350mLポリ容器で本体・蓋共ポリプロピレン製です。
500mLマリネリ容器は試料をビニル袋に入れたままセットしやすく、350mLの充填量も選べます。
1Lマリネリ容器は1Lの他500mLと1.5Lの充填量が選べ、500mLでは単位容積あたり計数効率が最高となります。
Ge検出器でよく使われているU8型容器も使えます(校正はオプション)。
使いやすい日本語ソフト
本器にはあらかじめ1分間~24時間に設定した測定時間が終了後、自動的に測定データを記録する「和文放射能濃度測定ソフトVer4」を付属しています。
同時に定量できる核種はI-131, Cs-137, Cs-134, K-40の4種です。校正済みの核種はCs-137とCs-134だけで、I-131とK-40の測定値は参考値です。
バックグラウンド減算、試料の質量や密度による換算係数の自動補正などの機能を備え、測定日時と基準日時の差を半減期で自動的に補正する機能も備えています。
「食品中の放射性セシウムスクリーニング法」で25Bq/kg以下と定められた「測定下限」が予定した測定条件で達成可能かどうかを測定開始前に推定できます。
また、自動連続繰り返し測定機能により、50Bq/kg以上と定められているスクリーニングレベルの確認も容易に行えます。
放射能濃度表示のすぐ下には不確かさ(±Bq/kg)を表示しますのでどの程度の不確かさが含まれているかもわかります。これらの基本的なデータ処理は文部科学省マニュアルに沿った形で行っています。
エネルギー校正用線源を付属し、Cs-137密封線源をオプションで用意
本器にはエネルギー校正用線源として1Lマリネリ容器入りの「塩化カリウム」が付属し、K-40の1461keVガンマ線を利用してエネルギー校正を行います。
また、エネルギー目盛の直線性調整用として350mLポリ容器入りの「超低濃度天然ウラン線源」も付属しています。
更に検出器の感度を定期的に確認するための線源として、350mLポリ容器入りの「Cs-137密封線源」をオプションで用意しています。
どの線源も法令で許された上限より低い強度で安心です。
測定性能
15分間測定における測定下限値(検出限界)(3σ)
※1時間測定で下記の約1/2、4時間測定で約1/4に低減されます。
容器タイプ | I-131 | Cs-137 | Cs-134 | K-40 |
---|---|---|---|---|
1Lマリネリ容器(1.5L充填) | 約2.0Bq/kg | 2.0Bq/kg | 2.3Bq/kg | 約26Bq/kg |
1Lマリネリ容器(1L充填) | 約2.3Bq/kg | 2.3Bq/kg | 2.7Bq/kg | 約30Bq/kg |
1Lマリネリ容器(500mL充填) | 約3.6Bq/kg | 3.6Bq/kg | 4.3Bq/kg | 約48Bq/kg |
500mLマリネリ容器(500mL充填) | 約5.2Bq/kg | 5.2Bq/kg | 5.7Bq/kg | 約68Bq/kg |
500mLマリネリ容器(350mL充填) | 約6.6Bq/kg | 6.6Bq/kg | 7.4Bq/kg | 約86Bq/kg |
900mLポリ容器 | 約5.9Bq/kg | 5.9Bq/kg | 6.1Bq/kg | 約77Bq/kg |
350mLポリ容器 | 約12.6Bq/kg | 12.6Bq/kg | 13.7Bq/kg | 約164Bq/kg |
測定上限 | 1,000,000Bq/kg (Cs-137を350mLポリ容器で測定した場合) |
---|---|
測定確度 | 日本アイソトープ協会製標準体積線源基準値に対して±10%以内 (Cs-137およびCs-134について) |
ガンマ線 エネルギー分解能 |
Cs-137の662keVにおいて6.5±0.5%(FWHM) |
ガンマ線 測定エネルギー範囲 |
0.03~2MeV |
- 2012年4月1日施行の「食品中の放射性セシウムスクリーニング法」では放射能濃度測定器の性能として25Bq/kg以下の「測定下限」が求められ、Cs-137とCs-134を分離して測定する場合、Cs-137とCs-134を単純合計した値と決められています。
- 上記の「測定下限」は試料に水を用いた場合の数値でそれより低い密度(1g/cm3未満)の場合は密度に反比例して増加します。
- 上記の「測定下限」は当社で16時間バックグラウンド測定を行い、バックグラウンドのネットレート(cps)と容器や充填量ごとの換算係数(Bq/kg/cps)の実測値を基に厚生労働省が示した計算式(3σ)によって求めた値で代表値です。 ただし、1Lマリネリ容器の500mL充填と500mL充填の換算係数は1L充填の標準体積線源を用いて実測した校正値との相対比率で設定されます。
- 上記の「測定下限」は測定時間を長くすると低減されます。20分測定で約14%、30分測定で約30%、1時間測定で約49%、2時間測定で約63%、4時間測定で約73%低減されます。(16時間バックグラウンド測定を行った場合)
- バックグラウンド測定時間は4時間以上でなおかつ試料測定時間の4倍以上を推奨します。
- γ線バックグラウンドレベルが0.1μSv/h以上の場合や試料にK-40が含まれる場合には上記より悪化する場合があります。純水に塩化カリウムを溶かして100Bq/kgのK-40放射能濃度溶液を作成し実測した結果、Cs-137測定下限値は上記の約2倍に増加することが確認されています。
- 雨水や井戸水などの採取直後はウラン系列のPb-214やBi-214が含まれますので12時間以上経過してから測定して下さい。
- ウラン系列やトリウム系列の放射性核種が高い濃度で含まれる場合にはプラス誤差を生じることがあります。
- Cs-134の濃度が高い場合、K-40測定値にプラスの誤差を生じる場合があります。(I-131とK-40の測定値は参考値です)
- 穀物や海藻類は500Bq/kg以上の高い濃度でK-40を含む場合があり、コンプトン散乱によるベースライン上昇が起こりますが本器には正しいベースラインを自動的に認識する機能が備わっており、誤差を最小限に抑えることが出来ます。
- 製品出荷時に4種類の容器毎に日本アイソトープ協会製のCs-137とCs-134の標準体積線源を用い正確な校正を行っております。その結果を基に「メンテナンス」画面に換算係数(Bq/kg/cps)が設定されています。
- 校正は1年間有効で2年目には再校正が必要です。再校正は有料で毎年1回行わせて頂きます。検出器とPCを当社でお預かりして行う方法とそれに加え現地へ出張し機器の整備点検も行う方法の2種類あります。費用については当社までお問い合わせください。
- 当社では本器で用いられる容器で校正されたGe検出器(662keVに於ける相対効率28%、エネルギー分解能1.33keV)を社内に設置し、産業技術総合研究所が開発した認証標準物質(玄米)をはじめ、色々な種類の検体をGe検出器と本器で比較測定し、Ge検出器に近い値が得られるよう性能改善に努めています。
製品構成
<システム一式>
- ガンマ線スペクトロメータ本体 1台
(3×3インチNaI(Tl)検出器・光電子増倍管・DPP・MCA一体型) - ガンマ線遮蔽装置(50-1L型) 1台
- データ処理装置(15インチ液晶ノート型PC) 1台
- 和文放射能濃度測定用ソフト(Ver4) 1式
- 350mLポリ容器 1箱(60個入り)
- 900mLポリ容器 5個
- 500mLマリネリ容器 8個
- 1Lマリネリ容器 8個
- 1Lマリネリ容器入り塩化カリウム 1個
- 350mLポリ容器入り超低濃度天然ウラン 1個
- 取扱説明書
- 校正成績書
<オプション>
- プリンタ(モノクロ・レーザー式) 1台
- 電子天秤(デジタル表示式) 1台
- 温湿度計(デジタル表示式) 1台
- 350mLポリ容器入りCs-137密封線源 1個
- 線源用キャリングケース 1台
(鉛の厚さは5mmで外側はアルミ製・質量10kg・幅325×奥行145×高さ180mm)
- 350mLポリ容器 1箱:60個入り(税別6,200円) ※2021年1月18日価格変更
- 900mLポリ容器 1箱:10個入り(税別7,000円) ※2021年1月18日価格変更
- 500mLマリネリ容器 1箱:12個入り(税別24,000円)
- 500mLマリネリ容器 1箱:24個入り(税別48,000円)
- 1Lマリネリ容器 1箱:12個入り(税別36,000円)
- 500mLマリネリ容器入り塩化カリウム 1個(税別4,000円)
- 1Lマリネリ容器入り塩化カリウム 1個(税別5,000円)
- U8型容器の校正追加費用 お問い合わせ下さい